トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

Belle et Sébastien ベル&セバスチャン

フランス映画 (2013)

セシル・オーブリ(Cécile Aubry)の児童文学『アルプスの村の犬と少年』をベースにした映画。フランス本国では実写のテレビシリーズ(1965年、13話)になり、日本でも『名犬ジョリィ』のタイトルで全52話のアニメになった(1981~82年NHK放映)。映画は、フランスで大ヒットしたが、受賞数は少ない。恐らくストーリーが単純で、脚本に深みと一貫性がないのが原因であろうが、全編オールロケで描かれるアルプスの美しい四季は息をのむほど素晴らしい。

第二次世界大戦下、ナチの支配化にあるフランス・アルプスの山村が舞台。最近のヨーロッパの新作では、ナチ支配化の社会を色々な側面から描いていて興味深い。セバスチャン(Félix Bossuet)はジプシーの女性が行き倒れで産み、以来羊飼いのセザール(Tchéky Karyo)がわが子として育ててきた孤児。峠の向こう(実はスイス)のアメリカにいると教えられてきた。セバスチャンが山で偶然出会った野犬と仲良くなり、大自然の中で交流するシーンが美しい。一徹な老人であるセザールもいい味を出している。

セバスチャン役のフェリックス・ボシュエは、8才の素朴な野生児。意図した演技の部分よりも、大自然の中で野犬ペルと奔放に遊ぶ姿が可愛らしい。


あらすじ

映画の冒頭で、断崖沿いを歩くセバスチャンとセザール。途中でセザールが何かの足跡を見つける。「狼じゃない」「ケモノだ」「1週間で羊3頭は許せん」。その時銃声が聞こる。誰かにカモシカのお母さんが撃たれたのだ。セザールは、崖の途中にカモシカの子が取り残されているのを見つけると、「真夏に雌を撃つなんて」「餓死させられん」と言って、セバスチャンをロープで吊り下げて救いに行かせる。断崖絶壁を吊り下げれて行くシーンの空撮の迫力には圧倒される。
  
  

カモシカの子は、幸いセザールの飼っている羊の乳で生き残れることが分かった。明くる日、セバスチャンは、セザールの娘アンジェリーナを手伝いに行かされる。「グランティエールを通れよ」「寄り道するな」「走れ」と言われ、一心に山を降りて行く。その途中、小川に沿って下っている時、唸り声を聞いて見上げると、岩の上に巨大で黒っぽい野犬がいた。吼えられても動揺せず、「セザールは君をケモノだって」「セザールは、僕の祖父ちゃん」「ホントの祖父ちゃんじゃないけど」と静かに話しかける。その時、人声がして野犬は逃げて行った。
  

人声は、村長らのケモノ掃討班だった。「見ろや」「お前の野生児、生きてるぞ」。実は、一行に、グランティエールでケモノが目撃されたと聞いたので、セザールも心配して同行してきたのだ。犬が気に入ったセバスチャンは、何も言うまいと思い、それがしらばくれような表情に出たことから、セザールに「その顔、何だ?」と訊かれる。村長に「ケモノ見たか?」を訊かれても、何も答えないので、「いつ話し方を教えるんだ?」と冷やかされる始末。セザールに、「何をしとった?」と訊かれ、「何も」と口を閉ざす。安全だからと、一行と村に向かうセバスチャン。野犬に脚を噛まれた呑ん兵衛が、セザールの酒癖に文句を言うと、「あんたが噛まれたの、すごく臭いから、ヤギだと思ったんだ」と逆襲。 負けてはいない。
  

別な日、セザールはセバスチャンを連れて野犬の罠を仕掛けに出掛けた。そこで、飼い主に虐待されて、「何度も叩いたとか」「逃げ出して野生化した」と聞き、確かめるために、噂の出所だと聞いた樵(きこり)にわざわざ会いに行く。そこで、「奴は 短い鎖で犬をつないだ」「で、叩いた」「何日もエサをやらんかった」「犬は完全にブチ切れた」と聞いて、ますます同情する。
  

セザールの仕掛けた罠が心配になったセバスチャンは、さっそく野犬を見つけに山に登って行く。「隠れてないで」「出ておいで。大事な話だ」と言いながら歩いてもなかなか出てくるものではない。小川のそばで偶然出会うが、相手も人間嫌いなのでなかなか寄ってこない。しかし、優しく声をかけているうちに後を着いて来るようになる。そして、罠が仕掛けられた場所まで来ると、まず石を投げて罠の怖さを見せ、次いで罠を取り上げて野犬に見せ、「嗅げ」「臭いを覚えろ」「これが罠だ」と教える。セザールにバレないよう罠を元に戻し、仲良く歩み去るセバスチャンと野犬。アルプスの大自然が美しい。
  
  

夏のある日、野犬の背中で寝ていたセバスチャン。「お前、臭いな」と鼻をしかめると、滝壺まで連れて行き、自分から率先して中に入って行って怖がる犬を水に入れ一緒に泳ぐ。水から上がった野犬が水を振るい落とすと毛並みは真っ白に変っていた。セバスチャンは雌犬であることに気付き、「ベル(美しい)」と名付けてやった。ここで、セバスチャン役のフェリックスの歌う主題歌「ベル、お前は美しい」が流れる。
  
  

秋になり、村を支配するドイツ兵の許可を得て、村長は大々的な野犬狩りを行うことになった。セバスチャンがケモノと仲良くしていると確信しているセザールは、この機会にケモノを捕まえようと、セバスチャンに「勢子(ケモノを追う役)をグランティエールに入れる」「行っちゃいかん」「メージュにいれば安全だ」と言い、わざとメージュの谷に行かせる。そして、30数人集まった村人の前で、村長がグランティエールに行こうとするのを押し留め、「もうそこにはおらん」「メージュに行くべきだ」と言う。セバスチャンがメージュの谷でベルと遊んでいると、谷の斜面に一列に広がって上げって来る勢子に気付き、慌てて上流に逃げる。しかし、そこには先回りしたセザールがいて、銃で撃とうとする。銃を構えるセザールの前に棒を持って「ダメだ!」と立ちはだかるセバスチャン。「逃げろ!」「撃たないで! 僕の友達だ!」。ベルは逃げ、セバスチャンは山小屋に監禁されてしまう。
  
  

逃げたベルだったが、結局は谷奥へ追い詰められ、村人に銃で撃たれてしまう。しかし、夜陰にまぎれてその場を脱出し、以前セバスチャンに教えられた秘密の隠れ家に逃げ込む。一方、セバスチャンは山小屋をすぐに逃げ出し、必死でベルを捜すが見つからないので絶望して隠れ家に向かう。そこでベルと再会できて喜ぶが、ベルはケガをしている。一旦山小屋に戻って消毒用にセザールのブランデーを持ってくる。しかし、ベルが元気がなく熱が高いので、村まで降りて行き、仲良しのお医者さんにいろいろ訊いているうち、ブランデーは羊を直すにはいいかもしれないが、「感染症には注射しか効かない」と言われ、“患者”が人ではなくベルだと打ち明ける。「僕の友達だ」とも。しかし、医者が害獣だからと場所を聞き出そうとするので、逆に、医者がユガヤ人一家のスイス逃亡を手助けしていることをバラスと脅して、隠れ家まで連れて来る。医者は、犬が暴れないようセバスチャンに注射させる。
  

雪が深く積もったクリスマスに近い夜、ユダヤ人一家を洞窟に隠した帰り、医者が狼の群れに襲われかける。医者と狼に気付いたベルは、山小屋の羊をわざと逃がして狼の気を逸らせ、医者を助けるのに成功するが、医者は足を挫いてしまう。ベルと医者は、何とかセザールの山小屋に辿り着く。そして、セザールの羊を食べていたのも狼だったことも判明する。セザールは間違いに気付き、仲直りに「名前はベルか?」と尋ねる。「“汚いケモノ”より、いいよね」。
  

捻挫でユダヤ人一家の逃亡を手助けできなくなった医者の代わりは、医者の反対を押し切りアンジェリーナが務めることになる。ところが、洞窟に食料を持って来たアンジェリーナのすぐ後にセバスチャンが。「一緒にいる」というセバスチャンに、「小さすぎるし、危険すぎる」。しかし、セバスチャンは、「いつも小さすぎると言うけど、ホントは僕を信じてないんだ」の言葉に同行を認める。かくして、アンジェリーナ、セバスチャンとベル、ユダヤ人一家の逃避行が始まる。氷河を登っていく一行。それを追うドイツ兵たち。
  

セバスチャンの一行にとって最大の難関は氷河にできたクレバスだった。運良く氷で橋ができていて、その上を、体をロープで繋いだ家族が一人ずつ順に渡る。最後になったベルは怖がって脚を踏み外すがロープで救われる。そして、遂にスイスとの国境の峠へ。アンジェリーナが最初に言った言葉は、「どう、アメリカに着いた感想は?」。これまで、アジェリーナは、セバスチャンの母は山向こうのアメリカにいると常に教えてきたのだ。「アメリカじゃない。スイスだ」。「知ってたの」。そして、アンジェリーナはセバスチャンに一緒には戻らないと告げる。ロンドンに行って、戦争の終結を手伝い、戦争が終わり次第戻ると。納得するセバスチャン。
  
  

村へ戻るのはセバスチャンとベルだけ。セバスチャンは「行こう、ベル」「戻ろう」とベルに呼びかけ下っていく。それを見ていた、スイスから登ってきた案内人がアジェリーナに訊く。「子供が一人で大丈夫か?」。「一人じゃないわ」。この心温まる言葉の後、大雪渓を点のようになって下るセバスチャンとベルのシーンにZAZ(ザーズ)の主題歌が重なる。
  
  

     F の先頭に戻る                    の先頭に戻る
     フランス の先頭に戻る               2010年代前半 の先頭に戻る

ページの先頭へ